NS1(後期)2013/8~2021/2


自分が初めて手にしたバイク、自分のすべての始まりのバイクがこのNS1である。MTゼロ半スポーツの代名詞。50なのに大柄な車体でフルサイズ。見かけだけではなくスピードもちょっとの加工で3桁が軽く出てしまううえメットインで通学やツーリングもできるまさに原付取り立て学生ライダーの憧れのバイクである。このバイクで整備や乗り方の基本を学んだといっても過言ではない。初めて公道に出て一人で県外に行き一人で夜の自販機の缶コーヒー暖を取り春の風をうけ、名も知れぬ山から平野を見渡したあの感覚は今でも忘れはしない。まさに青春の初めの1ページはこのNS1に彩られたといっても過言ではない。バイトの通勤、通学、事故、すべての初めてを学んだのがこのNS1だ。

大型バイクを所有する今の自分からすれば棒切れのようなスイングアームやスカスカのボディ、きゃしゃな足回り、どれをとってもおもちゃのように見えてしまうが、それが悪く良いところで当時の自分にとってはコレがすべてでありコレこそがバイクだったのだ。乗り味も大変よく軽い車体に単気筒とは思えないどこまでも回るエンジン、そして2stのエンジン特性がこの50ccのスピード感をさらに引き上げる。カスタムも自由自在。そして事故でネイキッド化され、ラッカー塗装されるまでがテンプレであり、自身もその一人だ。通学は50㏄可となっていたのでNS1で通学していたのだが50ccではないと何度も生活指導に呼び出され校長と親と三者面談させられたりといろいろあったが50㏄なので何も違反ではなくそのまま通学したりしていたのもいい思い出である。

大型バイクに乗ってからも所有しつづけMC41で事故にあった際はコレで通勤していたしこの軽い車体で飛ぶように走る感覚はいくつになっても飽きがなくとても楽しい時間だった。そんなずっとかわいがってきたこのNS1も手放すと決心した。現在他のバイクもあり、仕事などで乗れず実家に帰った時だけ動かす、そんな日々が続きもはやあるいみ置物になってしまったのである。個人的には実働でそばに置いておくそれだけでも満足なのだが、やはりバイクは乗ってあげたい。走らせてあげたい。でも今の自分は大型ものれるし他に選択肢が多くある。それなのにこの車両を所持していていいものなのかと思ったからだ。この車両をいまだにを求めている人は多い。50ccしか乗れない人やこのクラスの特別な車両を求めている人がいる。かつての自分もその一人だった。原付の免許しかない自分でも乗れるかっこいいMTバイクを来る日も来る日も探した記憶がある。そしてやっとたどり着いたのがこのNS1だったのだ。

自分はこのNS1にのってバイクの楽しさをしり、いろんな経験をし、そして今もバイクに乗っている。それは最初に手にしたバイクがNS1だったからだ。楽しかったからだ。コレがもしそこら辺の50のスクーターだったらもしかしたら趣味にはならずただの移動の道具としての認識しかしなかったかもしれない。ほかに選択肢のある今、自分がいつまでもこの車両を思い出と一緒にガレージに閉じ込めているより、必要としてる誰かとともにまた新しい道をはしってほしい。そしてまた自分のようにバイクの楽しさを知り、だれかのかけがえのない思い出の中の1ページ目になったほうがバイクにとって幸せではないだろうか。そう思ったから手放すことに決めたのだ。

自分のバイクを自分の意志で手放すのは初めてでいざ手放すとなると思い出と涙が次から次へとあふれてくる。そこでまた、このバイクでよかった。このバイクに乗れて本当に良かった。自分はそう思った。もうこのバイクとは会うことがないとは思うがそれでもまたどこかで誰かを乗せて走ってくれていたらうれしいし、解体されたとしてもどこかのNS1を生かす足がかりになればいいと思う。そしてまた誰かが自分のようにバイクの魅力と初めて乗ったときのあの感動を感じていてくれたらいいなと自分は思う。

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